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4月に入り、この本を読み始めて…やっと読了することができました。

悼む人/天童荒太

悼む人


読み終えるのに、ものすごく時間がかかりました。

天童さんの文体は決して読みにくいものではありません。

どちらかと言えば、とても読みやすいのですが、

読めない…。

読みすすめるのが、ものすごくしんどい一冊でした。

そして、読了後。


いま、静人はどこを旅しているのだろう?

静人の旅は、いつ終わりをむかえるのだろう?

静人の心のおもりがなくなる日はくるのだろうか?

フィクションなのに、リアルにそう感じてしまう自分がいました。


「死」とは、必ずやってくるものであり、誰にも平等なはず。

しかし、その「死」は、亡くなった人や、亡くなり方によって全く違うものになってしまう。

悲しみ惜しまれ、亡くなられてもなお愛され続ける人もいれば、

死んで当然だと罵られる人がいたり、誰にも知られない死もある。


私たちは、普段からたくさんの「死」を新聞やニュースで見ているけれど、

その報道を見ただけで、誰かの「死」に軽重をつけてはいないだろうか?

「マスコミで報道される事が全てではない」と、強く思っていても…

例えば、理不尽に殺された人の報道を見れば、可哀想だと、

亡くなられた人のことを不憫に思うこともあれば、

飲酒運転で事故を起こして亡くなった人の報道を見れば、自業自得なのでは?などと

思ったりしてしまっている自分がいる。



静人は、新聞や雑誌に載っている死亡記事を元に、

自分とは何の関係もない亡くなった人々の現場を訪ね、故人を悼む。

周りの人たちに、故人はどんな人だったのか。

「誰に愛されていたか?誰を愛していたか? どんなことをして、人に感謝されたか?」

その三点をたずねます。

そうして、決してその「死」を忘れないように…と心に刻むのです。


そんなことを聞いてどうするのか?

そんなことをして何になるのか?


彼の行為を、偽善だという人。無神経だと怒る人。一体どんな宗教なのかとたずねる人。

ある時は、不審者として警察に通報されたり。

しかし、一方では聖人のように思う人も。


そして、「なぜこのような旅を続けるのか?」その答えは、静人自身にも分からない。

ただ、彼は「自殺をする変わりに、人の死を悼むようになったのかもしれない」と話す。


彼は、幼い頃の身近な「死」の体験、そして、親友の「死」の体験から、

「死」について深く考えるようになる。

亡くなった人の事を忘れてしまっていた自分に気づき自己嫌悪に苦悩する。

日々の忙しさに流されて、大切な人の命日を忘れてしまっていた自分が許せなくなくなる。

ガードレールにもたせかけてある花束を見て、

自分がどれだけの多くの死を見過ごしてきたのかと胸を痛める。


だから、できる限り「死」を覚えておこうと。

覚えていられるだけ覚えていたい…と、静人は、旅を続ける。



静人の生き方をどう思うか?



私には、この生き方、見ているだけで(イヤ、読んでいるだけで)つらすぎました。

静人に、もっとラクになって欲しい…と切に思いました。

そして、時には、ただの自己満足じゃないか?って思うこともありました。

静人の帰りを待つ、父・母・妹。

母は、癌で余命数ヶ月。

妹は、兄の旅のせいで結婚するはずだった相手と破談になる。

なぜ、家族に心配をかけて、そこまでして旅を続けなければならないのか?

読みながら何度もそう思いました。

そして、静人の父親の言葉にとても共感しました。

「死んだ人ばかりを見つめていては、自分も、家族も、養えないよ…」



ただ、作中に登場する人物は、静人に救われてゆくのです。

静人と旅を一緒に始めた、夫を殺害した女性「奈義 倖代」 

雑誌記者の「蒔野 抗太郎」

そして、奈義倖代が殺した夫「甲水朔也」

それぞれが、「愛される」ことを知らずに育った、幼い頃に虐げられて育ち、歪んでしまった人たち。

彼、彼女らは、静人と出会ったことで「愛」を知り、救われる…。

(余談ですが、このあたりは「永遠の仔」の延長上にあるのかなぁ~と。)



私事ですが…ちょうど、タイムリーに(というのもヘンですが)

この本を読んでいる最中に、友人の命日があったのです。

今年で10回忌。

毎年、命日前後にはご実家を訪れ、お参りをさせてもらっているうちに…

もう10年も経っていたことに驚きました。

「10年間も忘れずに来てくれて本当にありがとう」

「ほんとうにありがとう」

ご両親から何度もお礼の言葉をもらって…


静人の旅のことを、なんとなく考えてしまいました。

静人は、亡くなった人を悼むことで…生きている人を救っているのだと。



久しぶりに、心がこもった小説を読んだ気がしました。

ただ、この本は、誰かにオススメ!っていうような感じではありません。

「悼む人」 静人が気になった方は、手にとってみてください!
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2009.04.09 Thu l 本・アート・音楽・映画 l COM(0) TB(0) l top ▲

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